自戦記第5局目 (掲載、平成28年6月22日・水)
第29回アマ竜王戦栃木県予選
(主催 読売新聞社)
2016(平成28)年5月15日(日)
大宮地区センター(栃木市)
持ち時間各30分、切れ負け(秒読みは無し)
予選ブロック第1局
(先)四段 神永 慶一郎(宇都宮市高3)
五段 門屋 良和
本大会の優勝者は代表として6月末の全国大会に出場。
神永君は本年、全国高校選手権県予選優勝者。
8月の全国大会(広島県)を控えている。
自戦記1局目で、練習対局として登場したが、
今回は公式戦での対局を振り返りたい。
初手からの指し手(読み方、横へ読んでいく)
▲7六歩 △3四歩 ▲7五歩 △4四歩
▲7八飛 △6二銀 ▲4八玉 △5四歩
▲3八玉 △4二玉 ▲2八玉 △3二玉
▲6八銀 △5二金右 (1図)
戦型は先手・神永君の石田流三間飛車、私は△4四歩と止めた後、居飛車で応戦。
飛車の位置が決まれば、玉を移動し囲いへもっていく。
1図以下の指し手
▲5六歩 △1四歩 ▲5七銀 △4三金
▲1八香 △3三角 ▲1九玉 △2二玉
▲2八銀 △3二銀 ▲4六歩 △2四歩
▲3九金 △2三銀 ▲9六歩 △9四歩
▲5八金 △3二金 ▲3六歩 △1五歩
▲4八金寄 △2五歩 ▲3八金寄 △2四角
(2図)
1図から▲5六歩~▲5七銀型を選択、他に▲6六歩~
▲6七銀もある。
神永君の作戦は穴熊にあったようだ、この構えはよく指しているから得意の形だと思う。
居飛車は△3二銀で左美濃、続いて△2三銀~△3二金で銀冠へ、さらに△1五歩~△2五歩~△2四角(2図)と構え十分とみた。
2図以下の指し手
▲7六飛 △3三桂 ▲5五歩 △同 歩
▲同 角 △5四歩 ▲7七角 △1二玉
▲6八角 △8四歩 ▲5六銀 △8五歩
▲7七桂 △5三銀 ▲7四歩 △同 歩
▲6五銀 (3図)
2図から▲7六飛と浮き、石田流三間飛車をとる。
一見▲4五歩が目につくが△5七角成で銀が取られる。
また、▲7四歩には△7二飛▲7三歩成△同銀で大したことはない。
△3三桂で角道を止め、△4五歩▲同歩△5七角成を
状況により狙う。
▲5五歩から一歩交換し、△5四歩▲7七角と収める。
△1二玉は先手角のラインを外した。
▲6八角は銀(5三)の活用を図ったもの、単に
▲5六銀は△4六角と歩を取られる。
▲7四歩から▲6五銀と動く、動かなければこちらから
△4五歩▲同歩△6八角成の狙いが生じてくる。
3図以下の指し手
△8六歩 ▲同 歩 △7五歩
▲6六飛 △4五歩 ▲7四銀 △6四歩
▲6三銀成 △4四銀 ▲6四飛 △4六歩
(4図)
3図から△8六歩と突き捨てる、▲同飛は△同飛▲同歩
△4一飛で後手良し、先手の銀と角が捌けていない。
▲8六同歩と応じ△7五歩は、▲同飛なら△8六飛
▲7一飛成△8八飛成の角取りで後手十分。
▲6六飛に待望の△4五歩、この歩は取れない△6八角成があるから。
▲7四銀にいったん△6四歩で飛車成を防ぎ、▲6三銀成に△4四銀とかわす。
▲6四飛にじっと△4六歩(4図)の拠点を作る、穴熊攻略にはかかせない一手。
4図以下の指し手
▲5二成銀 △同 飛 ▲6一飛成 △8二飛
▲5七角 △5六銀 ▲7五角 △4七歩成
▲同 金 △同銀不成 ▲4八歩 △3六銀成
▲3七歩 △3五成銀 ▲6四角 △7三歩
▲7四歩 △2六歩 ▲同 歩 △8四飛
(5図)
△4六歩(4図)は次に△4七歩成▲2四角△3八と
▲同金△2四銀(A図)の二枚替えにある。
▲5二成銀は緊急の一手、駒損でも速度で勝負。
私は△5二同飛と応じる、銀得はやはり大きい。
▲6一飛成△8二飛に▲5七角は▲7五角の捌き。
しかし、△5六銀▲7五角△4七歩成でさらに金得と
なる。こうなっては負けられない。
▲6四角の飛車取りに△7三歩と守り、▲7四歩に
△2六歩を突き捨て△8四飛と浮く。▲7三歩成なら
△6四飛で飛車角交換の含み。
なお、戻って△2六歩は、穴熊の弱点2七の地点を狙った。
5図以下の指し手
▲2五歩 △同成銀 ▲2七歩 △4七歩
▲同 歩 △5七角成 ▲5八歩 △4七馬
▲7三歩成 △6四飛 ▲同 竜 △4八歩
(6図)
▲2五歩△同成銀▲2七歩とフタをする。こちらから、いつでも△2七歩と形を乱す手がある。
△4七歩は▲同歩と取らせることによって、△5七角成が3九金に直接目標にできる。
▲5八歩で馬の位置を4七へ移動させられたが、大勢に影響はない。
▲7三歩成で△6四飛と飛車角交換をし、△4八歩
(6図)と垂らす。次の狙いは△4九金▲同金△同歩成で
と金作りである。
6図以下の指し手
▲6一竜 △2一歩 ▲4一飛 △2二金打
▲8一竜 (7図)
6図から▲6一竜と入る、次の狙いは▲4一飛の二枚飛車で後手は受けに窮す。△3一金と打っても▲同飛成からの
二枚替えで先手良しとなる。
したがって、▲6一竜に対し先に▲2一歩と守り、
▲4一飛に△2二金打と惜しげなく埋めた。
想定の範囲内である。
▲8一竜(7図)に、次の一手は角を打つ。
7図以下の指し手
△9二角 ▲同 竜 △同 香 ▲2六歩 △同成銀 ▲2四歩 △同 銀
▲3六桂 △同成銀 ▲同 歩 (8図)
△9二角と竜取りに打つ、▲9一竜なら△4九歩成
▲同金△2九馬の詰み筋へ。
▲9二同竜△同香に飛車角交換となった。
▲2六歩から▲3六桂と攻めてくるが素直に対応し、
8図へと進行していく。
8図以下の指し手
△4九歩成 ▲同 金 △6九飛
▲3八銀 △3六馬 ▲2七歩 △3五桂
▲8三角 △4六歩 ▲9二角成 △4七歩成
▲3七歩 (9図)
△4九歩成と捨てて▲同金に△6九飛と金取りに打つ。
▲3八銀には△3六馬と引く、慌てる必要はない。
次の狙いは△2六桂の他に、△1六歩▲同歩△1七歩
▲同銀△2五桂▲2八銀△1七歩(B図)である。
変化としてはじめの△1七歩に▲同香は△4九飛成
▲同金△1八金の詰み。また、▲1七同桂は△1五歩
(あるいは△2六桂)▲同歩△1六歩の攻め。
▲2七歩に△3五桂で2七の地点を狙う。
▲8三角は自陣の3八銀に守りをつなげる。
△4六歩に▲9二角成と香を取ったため、△4七歩成が
実現。
なお、△4六歩に▲4八歩は△4七歩成▲同歩△1六歩
▲9二角成△2五桂(C図)▲3七香△2七桂不▲同銀直
△同馬▲同銀△4九飛成(D図)で良い。
9図以下の指し手
△4五馬 ▲1四香 △2三玉
▲1一香成 △4九飛成 ▲同 銀 △2七桂不成
▲同 銀 △同 馬 ▲2八飛 △同 馬
▲同 玉 △4八飛 ▲同 銀 △3八金
▲2七玉 △4八金 ▲3九香 △3五銀右
▲2八玉 △3八銀 (投了図)
まで、146手で門屋五段の勝ち
▲3七歩(9図)に△4五馬と引いたが、この後本譜に出てくる△4九飛成と直ぐに指して良かった。
△2七同馬のとき、▲2八飛で▲2八香は△3九銀
▲2七香△2八金の詰み。
▲2八飛△同馬▲同玉に△4八飛と捨てる。
△同銀と取らせて△3八金から寄せきった。
本局を振り返り、駒の損得が非常に大きかった。
神永君はこの後予選リーグを2連勝し本戦トーナメントへ進出。
また、改めて高校選手権の全国大会でも活躍してほしいと思う。
最後までご覧いただきまして、誠にありがとうございました。 (門屋)