自戦記第3局目    (掲載、平成28年5月17日・火)

 

 

第61回栃木県将棋選手権戦

(兼第57回関東アマ名人戦栃木県予選)

 

 

2016(平成28)年3月13日(日)

国本地区市民センター(宇都宮市)

  

持ち時間各20分、秒読み付30秒

 

 

 予選ブロックリーグ(G組)1回戦

 

(先)四段 阪本 駿(那須塩原市高1、当時)

   五段 門屋 良和

 

 

 

初手からの指し手(読み方、横へ読んでいく)

▲7六歩 △8四歩 ▲7七角  △3四歩  

▲2二角成            (1図)   

 阪本君は本大会を中1の時、史上最年少で初優勝、昨年も2度目の優勝を飾っている。

 

 さて、▲7七角と上がって△3四歩▲2二角成(1図)と角交換、一手損ではあるが現在流行形の一つである。

 

 

 

1図以下の指し手

     △2二同銀 ▲8八銀  △4二玉  

▲6八飛 △6二銀  ▲4八玉  △3二玉  

▲3八玉 △1四歩  ▲1六歩  △3三銀

▲7五歩              (2図)

 

 角交換型四間飛車となり、玉を移動していく。

玉は飛車と反対方向へ行くのが手順。

 

 なお、▲6八飛で▲7八飛の三間飛車は△4五角

(A図)が生じる。

 

  

 

▲7五歩(2図)は得意の三間飛車への意向。

 

 

 

2図以下の指し手

     △6四歩  ▲7八飛  △6三銀  

▲2八玉 △5二金右 ▲3八銀  △4四角 

                  (3図)

 ▲3八玉と移動しているので、▲7八飛に△4五角の筋はなくなった。

 

 三間飛車(石田流)に対し△6四歩から△6三銀と構える。

 ▲3八銀の片美濃囲いの時、△4四角(3図)と▲7六飛を牽制してみた、と同時にもう一つ狙いがある。

 

 

 

 

3図以下の指し手

▲7九金 △2四銀 ▲7六飛 △4二金上 

▲2六歩 △5四歩 ▲2七銀 △6五歩

               (第4図)

 

 

 △4四角の狙いはもう一つ△2四銀の後、△1五歩▲同歩△同銀▲同香△同香▲1七歩△1二香(B図)の端攻めある。

 

 

 

 本譜、▲7九金から▲7六飛は、石田流へと同時に飛車を横へ1筋の方にも効かした。阪本君流石である。

 そして、▲2六歩から▲2七銀の銀冠で補強。

 

 △6五歩(4図)は、△6四銀から△5三角~△7五銀の筋を睨む。

 

 

 

 

4図以下の指し手

▲3八金  △6四銀  ▲2五歩  △3三銀  

▲3六銀  △5三角  ▲4五銀  △6三金  

▲2七角  △7五銀  ▲5六飛  (5図)

 

 

 

 ▲3六銀から▲4五銀、▲2七角は見事な構想である。

△7五銀に▲5六飛(5図)と中央を狙う。

 

 

 

 

 

5図以下の指し手

       △6四金  ▲5四銀  △3五角  

▲6八金 △5五歩  ▲9六飛  △9四歩

                  (6図)

 5図から△6四金と上がり、▲5四銀に△3五角とかわして、△5七角成を含みにした。

 

 ▲6八金の守りに△5五歩と飛車道を止めて、▲9六飛に△9四歩(6図)、しかし、ここは当然△8五歩から△8六歩と前進させて、先手の飛車の働きを弱めるべきであった。

 

 

 

 

 

以下の指し手

▲6三銀成 △9五歩  ▲3六飛  △4四角  

▲6四成銀 △同 銀  ▲4六飛  △5六歩

                    (7図)

 ▲6三銀成に△9五歩と飛車取りにしたが、▲3六飛に

△4四角と後手を引くようではいけないと思った。

 

 

 なお、△4四角で△6三金と銀を取るのは▲3五飛

△同歩▲6三角成(C図)で、飛車と7五銀が遊ぶから大した効果はない。

 

 そこで△5六歩(7図)の銀取りで勝負にでた。香、桂が入れば、△2六香や△3五桂の寄せを狙える。

 

 

 

 

 

以下の指し手

5六同飛 △8八角成 ▲5一飛成 △4一銀  

▲2四歩  △9九馬  ▲2三歩成 △同 玉  

▲6三角成 △2六歩        (8図)

 阪本君も▲5六同飛と勝負に出る、▲7七桂と守っているようでは△5五銀で飛車が危うい。

 

 △8八角成と銀を取り▲5一飛成に▲3一金を防いで

△4一銀まで必然。

 

 ▲2四歩は機敏、△同歩なら▲2二歩(▲2三歩)△同玉に▲6三角成で、▲4一馬と▲6四馬の両銀取りが視野にある。

 

 ▲2四歩には手を抜いて、△9九馬と香を取り、駒の損得でいえば、この時点で後手の私が銀・香得である。

 

 ▲6三角成に△2六歩と垂らす。

 

 

 

 

 

以下の指し手

▲3九玉  △2四香  ▲2五歩  △同 香  

▲1七桂  △2七歩成 ▲2五桂  △3八と  

▲同 玉  △5二金打       (9図)

 △2六歩(8図)に▲3九玉とかわす、なお▲4一馬は

△同金▲同竜のとき、△2七銀▲同金△同歩成▲同玉

△4九角(D図)の反撃がきつい、また8二飛と9九馬が自陣に遠く受けに効いていることもあって、後手良い。

 

 

 △2四香に▲2五歩△同香▲1七桂と切り返してくる。

うまみのある反発力だ。

 

 △2七歩成▲2五桂△3八とと金を取って△5二金打(9図)と大駒の両取り。

 

 勝負はまだまだ長い。

 

 

 

 

 

 

 

以下の指し手

 

▲2九香  △2四歩  ▲3三桂成 △同 馬 

▲8一竜  △同 飛  ▲同 馬  △7九飛  

▲4五馬  △4四銀  ▲4六馬  △3五銀

                  (10図)

 

 

 

 △5二金打(9図)に▲2九香が攻防手、△5一金と

竜を取れば頓死がある、▲3三桂成(両王手)△同玉

▲2二銀△4四玉▲4五金(E図)まで。

 

 よって、△2四歩はこの一手で▲3三桂成に△同馬と

引き付ける。

 

 ▲8一竜から飛車交換となって、△7九飛と打ちおろす。8二にあった飛車が7九へ打ちこめたのは大きな成果。

 

 阪本君の▲4五馬は▲3五桂(王手)の狙い。

 

 △4四銀と守り▲4六馬は、次に▲2四香△同馬▲同馬

△同玉▲3六桂(F図)の狙い。

 

 したがって、△3五銀(10図)と受ける。

 

 

 

 

10以下の指し手

▲3五同馬  △同 歩  ▲6九飛  △7六飛成 ▲7七歩               (11図)

 △3五銀(10図)に▲6四馬と銀を取ってくれれば

△2六桂の筋。

 

 ▲3五同馬から▲6九飛は目を見張る頑張りだ。

 

 自陣に飛車を打ってくれたので△7六飛成として

△3六歩を狙いにした。

 角の丸得であるし、断然大駒の働きに差がついている。

 

 しかし、▲7七歩(11図)と打たれて、次の手を迷ってしまった。

 

 

 

 

11以下の指し手

        △8七竜  ▲4五金  △3二玉  

▲3四銀 △2二桂  ▲3三銀成 △同 金  

▲3五金 △6二角  ▲3六銀  △2三銀  

▲4六角             (12図)

 

 

 ▲7七歩(11図)に、歩切れを解消して△8七竜と歩を取ったが、△7四竜と引き▲4五金に△5三銀(G図)から△4四銀徹底戦もあった。

 

 駒の働きを考えればこの方が良かったような気もする。

 

 

 本譜、▲4五金から▲3四銀と食らいついてきた阪本君、まったく恐れ入った。

 

 勝負はまだまだ続き、12図へと進行していく。

 

 

 

 

 

12以下の指し手

     △3四歩  ▲2四金  △同 銀  

▲同 香 △同 金  ▲同 角  △2三香  

▲4六角 △7八金       (13図)

 

 12図で△3四歩と打つのは絶対の一手、▲4五桂の金取りを先着させてはいけない。

 

 ▲2四金から華々しく交換となって、▲同角に△2三香と打ちかえす。

 

 ▲4六角に△7八金(13図)の飛車取り、飛車が入れば△2八飛の筋。

 

 しかし、そう簡単ではない。

 

 

 

 

 

13以下の指し手

▲2四歩  △同 香  ▲同 角  △2三歩  

▲3三香  △同 桂  ▲同角成  △同 玉  

▲4五桂              (14図)

 阪本君の2四歩は当然とはいえ好手、△同香▲同角

△2三歩に▲3三香から猛攻。

 

 ▲4五桂(14図)で筋に入った感じである。

 

 

 

 

 

14以下の指し手

     △4二玉 ▲5四桂  △3一玉  

▲2四歩 △同 歩 ▲3三銀  △3二香  

                (15図) 

 ▲4五桂(14図)に△4二玉は致しがたない、

△3二玉では▲3三銀でほぼ終わり。

 

 ▲5四桂も好手で、△5一玉なら▲7二銀の詰めろがかかる。

 

 ▲2四歩と打ち捨てて2三に空間を作らせ、▲3三銀に

△3二香(15図)と守ったが、ここで先手に決め手がある。

 

 

 

 

 

15以下の指し手

▲3二同銀成 △同 銀  ▲3三香  △2三銀打 ▲3二香成  △同 銀  ▲6二桂成 △同 金  ▲3三銀   △2六桂  ▲2八玉  △5一角

                   (16図)

                     

 

 

 ▲3二同銀成では▲2三歩(H図)で先手の勝ちだった。

以下△3三香▲同桂成△2一銀▲3二香△同銀右▲4二金

△同金▲同桂成(I図)まで。

 

 まさか、▲2三歩に△1三角の守りはあるまい。

 

 再び混戦となった、△2六桂(王手)は▲2九飛から

▲2四飛の筋を警戒した攻防手。

 

 △5一角(16図)と打てて、望みがでてくる。

 

 

 

 

 

16以下の指し手

▲3二銀成 △同 玉  ▲3三銀  △4一玉  

▲3一角              (17図)

 まだまだ阪本君の追撃は厳しい、▲3一角(17図)は▲4二金の詰めろであるが、次の手が決め手になった。

 

 

 

 

 

17以下の指し手

      △5二玉 ▲6四角成 △6九金  

▲1七玉  △6八金 ▲5三銀  (18図)

 

 △5二玉で良し、△4二香の守りもあるが、香を温存して詰ます順を考えていた。

 また、▲6四角成と銀を取られても後手玉の詰みはかろうじてないと判断した。

 したがって△6九金と飛車を取って勝ちと見た。

 

 

 ▲1七玉の早逃げでは▲7二銀の必至(J図)は考えられるが(※△7二同金は▲5三馬△6一玉▲5二金まで)、△3三角と銀を取り▲同桂成の後、先手玉は詰み。

 以下、△4八飛▲1七玉(※▲2七玉は△3八飛成で早く詰む)△1八桂成△同香▲2六銀△同玉△2八飛成

▲2七桂△2五香▲同銀△3五銀(K図)まで。

 

 

 ▲5三銀(18図)から王手ラッシュ。

 

 

 

 

 

18以下の指し手

          △6一玉  ▲6二銀成 △同 角  

▲5二金  △同 玉  ▲5三金  △6一玉  

▲6二金  △同 玉  ▲2四銀不成 (19図)

 ▲5三銀(18図)に△6一玉は絶対、△同金は▲同馬

△6一玉▲7一金までの詰み。

 

 △6二同玉まで進行して、▲2四銀不(19図)となる。

 

 ▲2四銀不で▲5三桂成は△7一玉▲6二角△8一玉としのぐ。

 また、▲5三角△6二玉▲2六角成と桂を取るのは、

△8九竜から△1九竜で後手良し。

 

 あとは入玉に注意すればよい。

 

 

 

 

 

19以下の指し手

     △2九飛  ▲2八歩  △2五歩  

▲同 銀 △3八桂成 ▲2六玉  △2八飛成 

▲2七歩 △8六竜  ▲3六角  △2七竜

                (投了図)  

 

 まで、176手で門屋五段の勝ち

 

 △2九飛と打つ、▲2八歩に△2五歩は余計で、△1九飛成▲2六玉△1七銀▲2五玉△2六金まで詰みあり。

 

 △8六竜(王手)は▲同馬なら△3七竜の筋。

 

 ▲3六角に△2七竜(投了図)で終局、以下▲同玉

△2八金▲1七玉△2七金打▲同角△2六銀まで。

 

 

 所要時間は、1時間半ほどの対局だったように思う。

 

 

 阪本君は予選ブロック2勝1敗で通過、本戦トーナメントでは上位進出を逃し惜しくも連覇を逃した。

 

 その後、5月の高校選手権団体部門県予選で優勝し連覇したのはさすがで、8月の全国大会(広島県)での活躍を期待したい。

 昨年は全国5位に入賞している。

 

 

 最後までご覧いただきまして、誠にありがとうございました。