自戦記第10局目 (掲載、平成30年6月12日・火)
第48回龍宮城戦・第1部リーグより第2回戦
主催(会場)宇都宮将棋センター
2017(平成29)年12月3日(日)
持ち時間各10分、秒読み付30秒
(先)三段 魚嶋 歩(宇都宮市中2、当時)
五段 門屋 良和
初手からの指し手(読み方、横へ読んでいく)
▲7六歩 △3四歩 ▲2六歩 △4四歩
▲2五歩 △3三角 ▲4八銀 △4二銀
▲5六歩 △4三銀 ▲6八玉 △8四歩
(1図)
魚嶋君は現在、日本将棋連盟の研修会C1クラスに所属している。
戦型は相居飛車となった。私の▲6八玉は魚嶋君が得意としている振飛車を予測したものだが、△8四歩(1図)で居飛車を表明した。
1図からの指し手
▲7八玉 △8五歩 ▲7七角 △3二金
▲8八銀 △5二金 ▲5八金右 △6二銀 ▲3六歩 △7四歩 ▲3七銀 △6四歩
▲4六銀 △4五歩 (2図)
1図から▲7八玉△8五歩▲7七角に、△3二金の他には△5四銀と上がって、△6五銀から△7六銀と先手の角頭を狙いにしていくのも考えられる。
△3二金に変えて△5四銀なら▲5五歩△6五銀▲2六飛(A図)の予定であった。
本譜、▲4六銀に△4五歩(2図)と反発した。
2図からの指し手
▲5五銀 △5四歩 ▲6四銀 △4六歩
▲3三角成 △同 桂 ▲3七角 △8六歩 ▲同 歩 △同 飛 ▲4六角 △6六歩 ▲同 歩 △3九角 ▲7七銀 △2八角成
▲8六銀 △4六馬 ▲同 歩 △2七飛
(3図)
△4五歩(2図)に▲5五銀とかわす。▲4五同銀は△7七角成▲同銀△3三桂(B図)で銀桂交換となってしまう。
続いて、△5四歩と突いて銀取りへ。▲6六銀と引こうなら、△7三桂から△6五歩の銀取りで、後手陣が躍動してくる。
私の▲6四銀は強気。後手に歩を持たれたら△6三歩で銀を取られてしまう、緊張する場面だ。
魚嶋君は△4六歩と突いた。▲同歩なら△7七角成▲同銀△4二角(C図)で銀を取ることができる。
(C図)は▲4六同歩と取らせたことにより、
△4二角には▲3七角と銀にヒモを付けさせないことにあった。鋭い!
なお、△4六歩の他には単に△4二角(銀取り)
もあり、▲1一角成△6四角(D図)の飛車取りも有力である。
本譜は飛車角交換の派手な応酬になった。
△2七飛(3図)は△8七角の狙いでもある。
3図からの指し手
▲7七銀 △2九飛成 ▲8三飛 △4二玉 ▲8一飛成 △3七角 ▲6五桂 △4五桂
▲7三桂成 △同 銀 ▲同銀不成△3三玉 ▲1一竜 △8五桂 ▲8六銀 △4六角成 ▲1五角 △4四玉 ▲4八香 (4図)
3図から△8七角を防いで▲7七銀と引き、後手は△2九飛成で桂を取る。
私も▲8三飛から▲8一飛成で桂を取り返す。
魚嶋君の△3七角は上手い、△4六角成(銀取り)から△4五桂~△5七桂成が狙いである。
私の▲6五桂は次に▲5三角の脅しのような手である。この時、後手玉の範囲(逃げ道)は狭い。
△4五桂は3三への玉の逃げ道を作った。▲4五同歩と桂を取られても△6四角成(E図)で銀を取り返せる。
本譜、△8五桂▲8六銀△4六角成で白熱した戦いとなった。▲1五角(王手)△4四玉▲4八香で4図となる。
4図からの指し手
△4七歩 ▲同 香 △5六馬 ▲6七銀 △同 馬 ▲同 金 △2八竜
▲5八歩 △5五桂 ▲2六角打 △3五歩 ▲同 角 △3四玉 ▲1三角成 (5図)
△4七歩▲同香と吊り上げてから△5六馬▲6七銀に△同馬から△5五桂と迫ってくる。桂が三枚五筋の横に並んだ珍しい恰好だ。
私は▲2六角打(王手)から▲1三角成(5図)で次に▲3五馬の詰めろである。
これで私の勝と思った。しかし、甘くはなかった。
5図からの指し手
△4四銀 ▲2一竜 △6七桂成
▲同 玉 △3一歩 ▲1四馬 △5五銀
▲3二竜 △同 歩 ▲3五金 △4三玉
▲4五香 △5三玉 ▲8五銀 △8六金
▲7四銀 △5六銀打▲7八玉 △6七飛
▲6五桂 △同 銀 (6図)
5図は▲3五馬の詰めろである。
魚嶋君は△4四銀と守る。▲2一竜の金取りにはいったん△6七桂成と金を剥して、△3一歩と金底の歩で受ける。魚嶋君もいつの間にかしぶとくなった。
▲1四馬は△2五玉からの入玉を防いだ。
魚嶋君の△5五銀は上手い、△5六銀打を見せて私にプレッシャーをかける。
ここで私は▲3二竜と金を取ったが、急ぎ過ぎ。
今、冷静に見てみると、ここは▲2六桂(王手)とし、△4四玉(△4三玉は▲4五香と桂を取る)▲1三馬(F図)として、次に▲3五馬を見せるべきであった。
または、▲1三馬(F図)の後、▲3二竜と金を
取ってから▲3五馬△4三玉▲3四金の詰み筋もあった。
竜で金を取った後、▲3五金から▲8五銀と桂を取る。この後は、▲7四銀から▲6五桂の詰みをみせて勝ちだ。
とはいえ貴重な手番は魚嶋君にある。魚嶋君は△8六金と当然ながら迫ってくる(他には△8七飛の王手銀取りもあるが、▲7七桂でどうか)。
▲7四銀(次に▲6五桂の詰めろ)に△5六銀打(▲6五桂には△同銀をも用意した攻防手)▲7八玉△6七飛と打つ。
この△6七飛は詰めろ。次に△8七金▲7九玉△6九飛成▲同玉△3九竜(G図)以下詰み。
したがって、▲6五桂(王手)はこの一手で、△同銀となって6図になる。
6図からの指し手
▲6七玉 △6六銀左 ▲7八玉 △7四銀 ▲7九玉 (7図)
△6五同銀(6図)に▲6七玉と当たり前のように飛車を取ったが、再度改めてこの目で見ると▲6五同歩(詰めろ)と銀を取る方が勝った。△8七飛成は▲7九玉で凌げた。
7図は先手玉に詰みがある。
7図からの指し手
△6七桂 ▲7八玉 △7七銀打
▲同 桂 △同銀成 ▲8九玉 △7九桂成
▲同 玉 △8七桂 ▲8九玉 △8八歩
▲9八玉 △9九桂成▲同 玉 △9八香
まで、120手で魚嶋三段の勝ち (投了図)
7図から△6七桂と詰ましにきた魚嶋君。順調に進んで△7九桂成では、単に△8八歩▲9八玉△8七金で詰みだった。局後、魚嶋君に指摘すると錯覚があたようだ。
けれども、最後は見事な詰みだった。一段と実力をつけたようだ。
最後までご覧いただき誠にありがとうございました。 (門屋)