自戦記第4局目 (掲載、平成28年6月13日・月)
第61回栃木県将棋選手権戦
(兼第57回関東アマ名人戦栃木県予選)
2016(平成28)年3月13日(日)
国本地区市民センター(宇都宮市)
持ち時間各20分、秒読み付30秒
本戦トーナメントより ベスト8
(先)五段 門屋 良和
四段 川崎 裕史(小山市)
川崎さんは30代前半、2月に行われた支部名人戦県予選決勝に進出された実力者。
川崎さんは居飛車で、矢倉など得意としている。
初手からの指し手(読み方、横へ読んでいく)
▲7六歩 △8四歩 ▲6八銀 △3四歩
▲6六歩 △6二銀 ▲5八飛 △5四歩
▲4八玉 △4二玉 ▲3八玉 △3二玉
▲2八玉 △8五歩 ▲7七角 △3三角 (1図)
戦型は私が最近よく用いている中飛車。
△3三角(1図)は穴熊か左美濃囲いを想定できるが、
もう一つ狙いがある。
1図以下の指し手
▲6七銀 △5三銀 ▲3八銀 △2二玉
▲5六歩 △1二香 ▲8八飛 △5二金右
▲7八金 (2図)
△3三角(1図)に▲6七銀は必要な一手、▲3八銀
では△4二角と引かれ△8六歩からの角交換を狙われる。すなわち、▲6七銀は△4二角なら▲8八飛の受けを用意した。
参考までに変化手順を示すと長くなって恐縮であるが、▲6七銀にかえて▲3八銀以下は、△4二角
▲6七銀△8六歩▲同歩△同角▲8八飛△7七角成
(A図)▲8二飛成△6七馬の二枚替えとなり、
▲8一竜△7一金▲9一竜なら△8二銀▲9二竜
△7四角(B図)▲8三歩△同角▲同竜△同銀と
なって、居飛車十分の形勢となる。
本譜に戻って、△1二香は穴熊の意思表示。
そこで▲8八飛の向飛車に転換させ、△1一玉への穴熊囲いを牽制させた。
△5二金右は陣形の離れ駒を無くし、駒と駒を連結。
もし、ここで△1一玉ならどうなるか。
△5二金右に変えて△1一玉の変化手順。
△1一玉▲7八金△2二銀▲8六歩△同歩▲同飛△同飛
▲同角(C図)となって銀取り(5三)、△6四歩
▲8三飛△7一金▲8二歩△7二金▲8五飛成(D図)で先手良し。
(D図)で△6九飛の打ちこみは▲7七角と引き、次に
▲5九金で飛車が捕獲できる。8筋に竜の筋が効いている。
2図以下の指し手
△3二銀 ▲8六歩 △同 歩
▲同 飛 △8五歩 ▲8八飛 △7四歩
▲6八角 △6四歩 ▲7七桂 △7三桂
▲8九飛 △2四歩 (3図)
川崎さんは△3二銀で左美濃に構え堅実な手順。
私は▲8六歩から歩を交換。
△8五歩と受けるところで△8六同飛▲同角△6九飛は▲8八飛(E図)と受け、次に▲5九金で飛車の捕獲があって後手いけない。
続く△7四歩も大切で、先手に▲7五歩から▲7六銀、
▲8五銀の筋が生じる。
▲7七桂は▲8五飛の狙い、△7三桂と防ぐ。
▲8九飛と引いて角のラインから外し、飛車の働きを良くした。
△2四歩は銀冠の構えへ発展させる一手だ。
3図以下の指し手
▲1六歩 △1四歩 ▲2六歩 △2三銀
▲2七銀 △3二金 ▲3八金 △6三金
▲3六歩 △4四銀 ▲3七桂 △5五歩 (4図)
1筋の端歩を突き合ったのち、後手の銀冠の歩調に合わせて▲2六歩からこちらも銀冠にし上部を厚くした。
しかし、△5五歩(4図)と突かれてみると、▲同歩は
△同銀から△6六銀を狙われていけない。先手側が作戦負けしたように思う。
▲2六歩では、▲7五歩△6三金▲7四歩△同金と形を乱しておくべきだったろうか。
川崎さんとの感想戦では居飛車も十分とのことだったので、今後の検討課題にしたい。
なお、参考までに▲7五歩の時△8四飛の受けは、
▲7四歩△同飛▲8五桂△8四飛▲8六歩△8五桂▲同歩△7四飛▲4五桂(F図)の筋が生じる。
4図以下の指し手
▲4六歩 △5六歩 ▲同 銀 △5四金
▲4五歩 △5五銀 ▲同 銀 △同 金
▲5九飛 △5八歩 ▲4九飛 △8六歩
▲8八歩 △5六金 (5図)
▲4六歩に△5六歩▲同銀△5四金が力強い手で中央の
厚みは断然後手が良い。
▲4五歩に△5五銀から銀交換となった。
▲5九飛は▲4四銀△同歩▲5五飛の狙いだが、あっさり△5八歩と打たれ▲同飛は△6九銀の両取の筋がある。
▲4九飛に△8六歩▲8八歩と守らされて苦戦。
△5六金(5図)は実に味の良い手で、△6六角や、
△8七歩成▲同歩△6七銀の筋もある。
5図以下の指し手
▲4四歩 △同 歩 ▲2五歩 △同 歩
▲同 桂 △2四角 ▲同 角 △同 銀
▲3七銀 △5五角 (6図)
5図から▲4四歩と突く、△同角なら▲4五銀の両取り。
角道を止めておいて、▲2五歩から玉頭戦で勝負にでた。
川崎さん丁寧に対応する。
なお、△2五同歩に対し▲同桂では▲1五歩と突きたいところだが、取ってくれれば▲2五桂から▲1三歩の筋。
しかし、▲1五歩を取らずに△2六銀と打たれるときつい。
▲3七銀で自陣を補強した、それと▲4四飛の含み。
単に▲4四飛では△5五角の王手飛車。
また、△2五銀と桂を取れば▲2六歩で銀を取り返す。
本譜、△5五角(6図)で▲4四飛を消す。
6図以下の指し手
▲5七歩 △同 金 ▲7一角 △2五銀
▲2六歩 △4五桂 (7図)
▲5七歩の金取りは手筋、このままでは△4六銀▲同銀
△同金が怖い。
▲7一角の飛車取りに△2五銀と桂を取られて参った。▲8二角成は△2六歩▲1八銀△3六銀(△4五桂)が
ある。
▲2六歩と辛抱したが、先ほど取った桂を△4五桂
(7図)と急所に打たれる。
7図以下の指し手
▲4四角成 △同 角 ▲4五飛 △6六角
▲4一飛成 △5六角 (8図)
7図で▲2五歩と銀を取りたいが△3七桂成▲同金
△4八銀で後手良し。
意を決して▲4四角成△同角▲4五飛△6六角
▲4一飛成で勝負した。
△5六角(8図)に対し、チャンスが巡ってきた。
8図以下の指し手
▲2五歩 △2六歩 ▲同銀左 △4二飛
▲同 竜 △同 金 ▲5一飛 △4九飛
▲3一銀 △3三玉 ▲4七歩 (9図)
▲2五歩と銀を取ったが、△4二飛と飛車交換されて
ダメにした。
ここは先に▲2四桂(G図)と両取りに打つべきだった。
例えば△3三金なら▲2五歩、△4二金は△9一竜で
いずれも△4二飛の筋がない。
また、△3一金は▲9一竜△4二飛▲4三歩(H図)
△同飛▲3一竜△同玉▲3二金の詰み筋が生じてくる。
本譜と全く雲泥の差であった。
となれば、▲4一飛成に対する△5六角が7八の金取りにはなっているが▲2四桂と打たれていたら混戦模様となっていたと思われる。
△5六角にかえて先に△4二飛とぶつけ▲同竜△同金
▲2五歩に△4九飛(I図)の攻防手で、次に△4七金から△3九角打の詰めろの筋が明快であったように思う。
勝っても負けても反省は必要である。
9図以下の指し手
△4七同金 ▲4二銀不 △同 玉
▲4一金 △4三玉 ▲4四歩 △同 玉 ▲1八玉 △3八金 ▲同 銀 △2八金
まで、108手で川崎四段の勝ち (投了図)
▲4七歩(9図)と守った、△同金なら▲5六飛成と角を取れると思ったが、なんのことはないあっさり川崎さんに△4七同金と取られて読み直すと、▲5六飛成には
△3八金▲同銀△3九角成以下詰みがあるではないか。
悪いとはいえまだあきらめていなかったので、この見落としには戦意喪失した。
投了図からは▲2八同玉△3八角成▲同玉△4八角成
以下詰み。
川崎さんの手厚い将棋に、特に5筋中央からの進撃が見事であった。
私のほうでは結局7八金が遊んだままの状態となったの
で、活用方法を考え直したい。
川崎さんは本大会第3位に入賞した。優勝者が代表を
都合により後日辞退されたため、川崎さんが代わりに関東大会へ出場された(5月末)。
リーグ戦4対局行い、後半連勝し指しわけとなった。
懇親会もとても楽しかったと話されていました。
またの活躍を期待しています。
最後までご覧いただきまして、誠にありがとうございました。 (門屋)